第60回 <看護留学>
このまま帰れない!
どん底から勝ち取った看護師への道

看護留学を経てシドニーの病院で働く木村さん

念願の看護師となり、シドニーの病院で看護師長として働く木村安谷さん。

常にニーズがあり、一生使える資格である看護師。オーストラリアやニュージーランドでは、看護師は永住権を取りやすいことからも人気が高い職種だ。

今回は、ワーキングホリデーから一念発起してオーストラリアの大学に進学。卒業後、苦難の末、看護師資格を取得し、現地の病院に勤務している木村安谷(あや)さんの体験談を聞いた。

最初はワーホリでオーストラリアへ。英語ができず悔しい想いも…

 ―木村さんの留学から看護師になるまでのおおまかな流れについて教えてください。

木村:最初はワーキングホリデーでオーストラリアに来ました。その後、学生ビザに切り替えて、語学学校のIELTSコースで半年、オーストラリアンカソリック大学(ACU)の進学準備コース(Diploma of Nursing)で1年、大学学部課程(Bachelor of Nursing)で3年間学んだ後、就職活動をして、シドニーの病院に就職。現在は、看護師長として働いています。

―そもそもの留学のきっかけは何だったのですか?

木村:中学の頃から海外に行きたいと思っていたんです。それで高校卒業後、大学には進学せず、アルバイトをしてお金を貯めて、ワーキングホリデーでオーストラリアに来ました。

―英語力はどのくらいだったんでしょう。

木村:ほとんどゼロでした。最初の1カ月は語学学校に通ったんですが、自分の英語力のなさに愕然としましたね。「May I help you?」すら知らなくて。そんなのでよく来られたなと思いました。

―仕事はすぐ見つかったんですか?

木村:日本食レストランなら英語力がなくてもなんとか働けるのでそこでアルバイトをしました。でも、それでは英語力がなかなか伸びなくて…。やはり、ローカルの仕事をしなければだめだと思い、授業料の安い語学学校に移って英語を学びつつ、仕事を探しました。スーパーのレジ係の仕事を得たのですが、お客さんの言っていることが全然わからなくて苦労しました。何度も聞き返していたらお客さんが怒って「英語がわからないのに働くな!」と怒鳴られたことも。悔しい想いはたくさんしました。

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 このままじゃ帰国できない!中途半端な留学が嫌で、大学進学を決意

看護留学中は勉強漬けの日々

「デスクの上には常に、看護の本、英英辞典、医療英語の辞典が並んでいた」と木村さん。課題は締切の4週間前からとりかかり、何度も書き直し。人の倍以上の時間がかかった。

 ―大学進学を考えたのはなぜですか?

木村:1年間のワーホリビザの期限が迫ったとき、自分を振り返ってみたのですが、大して英語力は伸びていない。このまま帰国しても、高卒の学歴だし、この程度の英語力ではどこにも就職できないと思ったんです。何一つ成し遂げていない、中途半端な自分が嫌でした。考えた末、大学に進学しようと決意しました。入学するにはIELTSで6.0以上のスコアが必要なので、語学学校のIELSコースに通いました。語彙力も文法も全くできていなくて、苦戦しましたね。でも、半年でIELTS6.0 をクリアできたのは、自分でもかなりがんばったと思います。

 ―その後、大学進学準備コースに進まれたのですね。看護師のコースに進もうと思ったのはどんな理由から?今、永住権をお持ちですが、永住も意識していたのですか?

木村:高校のときに、看護師になりたいと思ったこともあったんです。どうせなら自分の好きな分野に進もうと思いました。看護師資格があれば、永住権が取りやすいということは聞いていましたが、その時は全くそこまで考えていませんでした。

看護留学中に実習室で悪ふざけ。

大学の同級生たちと実習室で悪ふざけ。

 ―勉強は大変でしたか?授業にはついていけましたか?

進学準備コースでは、大学の授業で必要なアカデミックスキルや、医療英語、大学で専攻する科目も1つ取っていました。その1年間ももちろん大変でしたが、私以外の人も外国人だったので、まだよかったんです。学部コースからは、ローカルの学生たちといっしょの授業になるので予習復習なしでは絶対についていけません。課題も多く、下書きから仕上げまで、人の倍以上の時間がかかっていたと思います。その間、アルバイトも3つかけ持ちしていたので、平均睡眠時間は4~5時間。本当に大変でした。今思い出してもよくやれたなと思いますね。

 

何度も試験に落ち、夢が閉ざされるのかと諦めかけたが…

看護課程を無事に修了した木村さん

アルバイトを掛け持ちしながら授業に出て試験もクリアし、卒業までこぎつけた。「友達に『1日48時間くらいあるんじゃない?』と言われたくらい自分でもがんばったと思う」と木村さん。

 ―学部課程は3年間で無事修了。がんばりましたね!その後、看護師の仕事はどのようにして得たのですか?

木村: それが、また大変で…。オーストラリアでは、看護師として働くためにはAHPRA(Australian Health Practitioner Regulation Agency)への登録が必要です。外国人の場合、登録されるためには、IELTSで7.0以上を取るか、OET(Occupational English Test=医療英語試験)で所定のスコアを取らなければなりません。大学を卒業すると学生ビザが切れるため短期滞在ビザ(Temporary graduate visa)を申請しましたが、ビザの有効期限内にスコアが取れなければ帰国しなければなりません。何度も試験にトライしましたが、なかなか合格できなくて、「もう無理なんじゃないか。ここまで来たのに、こんなことで夢が閉ざされるのか」と絶望的になりました。

ギリギリの状態ですね。結局どうやって仕事を得ることができたのですか?

なんとかOETに合格できて、看護師登録し、精神科(Mental Health)の看護師として採用が決まったんです。でも、精神科は第一志望ではなかったので、働きながら、一般看護(General Nursing)の仕事を探し続けました。10件以上申し込んで、1件だけ面接をしてくれる病棟があったんでが、思ったように受け答えができず、あきらめかけていたんです。すると、忘れたころに連絡があり、仕事が決まりました。職探しを始めてから1年。嬉しくて思わず踊っちゃいました(笑)。

 ―努力が実ったんですね。ここまでがんばれたのはどうしてだと思いますか?

木村:「絶対にあきらめない」という気持ちですね。中途半端な自分が嫌でしたし、このままじゃ恥ずかしくて帰れない、と思ったからがんばれたと思います。

 ―仕事をしていて大変だと思うことは?

木村:ありがちですが、文化の違いや言葉の壁には今でも苦労しています。オーストラリアに住んで6年経ちましたが、今でも英語がわからないときは「わからない」と言うし、「それはどういう意味」と聞き返します。相手もそれで嫌な顔をすることなく色々教えてくれます。最初は、同僚たちの自己主張の強さに戸惑いました。でも、看護師長となった今ではその経験がとても役立っていると思います。

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 次に続く人のために、日本人として恥ずかしくない行動を

現在はシドニーで看護師長として働く木村さん

最近は、看護留学をしている日本人向けに、医療英語や現地で看護師として働いている経験についてセミナーも行っている。

―今後の夢は何ですか?

木村:日本の医療現場に英語を広めることです。今、日本を訪れる外国人が増えています。当然、病院に来る外国人の患者さんも増えると思うんです。すると、医療機関で英語が話せる人が絶対に必要になります。それだけでなく、英語ができれば世界の医療現場とつながり、意見交換や技術交換ができます。働く環境や、地域への医療の進展など、日本以外の医療体制から学び活かせたら、素晴らしいことだと思いますね。

―海外留学全般について、感じたことはありますか?

木村:海外に来てみて、日本人でありながら、日本の文化、歴史をちゃんと知らない自分に気づき、恥ずかしかったですね。アジア人だからと差別されることもあれば、日本人で得することもありました。日本を外から見たことで、色々なことを学びました。

驚いたのは、日本人って、海外の人からとてもいい印象を持たれていること。それって、先人たちが残してくれた功績だと思います。私も後から来る人のためにも日本人として恥ずかしくない人間でいようと思います。それを気づかせてくれたのは留学のおかげかなと思います。

ビーバー教授の解説

いかがじゃったかな、木村さんのオーストラリア留学。

ほとんど英語力ゼロの状態から、オーストラリアの大学に進学し、現地で看護師の仕事を得た木村さん。その苦労は並大抵ではなかったようじゃ。

ここまでできたのは、「留学経験を無駄にしたくない」、「中途半端では終わりたくない」という強い心があったからじゃろう。

留学を成功させるには、「強い想い」が不可欠じゃ。かといって、誰でも最初から明確な目的があって留学しているわけではない。木村さんのように、あとからふつふつと想いがわいてくる場合もある。最初からあきらめず、あらゆる可能性を信じてチャレンジしてほしい。

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