- ビーバー教授の留学道場 -

第54回<不動産>業界別インターナショナル・スキル

株式会社グローバルトラストネットワークス代表取締役社長
後藤裕幸氏

2000年、中央大学法学部在学中に学生ベンチャーを発足。IT事業や海外進出コンサルティング事業を手がける。ビジネスパートナーの留学生たちが、外国人であるという理由だけで部屋を借りるのに苦労している実態を知り、06年にGTNを設立。「外国人が日本に来て良かったと思える社会を創ることで、日本の国際化に貢献する」というビジョンのもと、賃貸住宅保証を中心に外国人の生活サポート事業を幅広く展開している。

 

今の時代、「グローバル化が進んでいる」ということに異議を唱える人は少ないかも知れないが、本当にそうだろうか? これから国際的な仕事をしてみたいと考えている人は、ぜひ一度「国内のグローバル化」について、立ち止まって考えてみてほしい。人材雇用は、顧客開拓は、事業内容は……。日本人だけではなく、世界の多様な人々に開かれたものになっているだろうか?

今回は、「不動産業界の国際化」をミッションに掲げ、外国人を専門に賃貸住宅のトータル・ソリューションを提供する唯一無二の日本企業、株式会社グローバルトラストネットワークス(以下、GTN)をクローズアップ。後藤裕幸社長に、これからの不動産業界で求められるインターナショナル・スキルについて話を伺った。

 

「住」は全ての人間に保障される基本的人権。
その社会的使命を、ひらすら訴えてきました。

ー 「不動産業界」「インターナショナル」と書くと、海外の都市開発プロジェクトに関わるとか、外国人投資家と交渉するとか、外向きの仕事をイメージする読者が多いかもしれません。だからこそ今回は、ぜひ御社の取り組みをご紹介したいと思いました。日本国内、それも不動産の最小単位といえる市民向け賃貸住宅を舞台に、まさか、これほどインターナショナルな業務が日々行われているなんて、日本人学生の何割が知っているでしょうか。御社は2006年の創業以来、一貫して、全人口の2%に満たない外国人だけを対象とした事業を展開しています。賃貸住宅の仲介、保証。入居後のライフサポート。さらにはアルバイト・就職紹介、携帯電話サービスまで……。このような会社は、業界広しといえども、他に例を見ません。

後藤:現在、8200社の不動産会社、43の大学と提携し、累計約8万件の外国人入居者の家賃保証を請け負っております。今年度は、さらに3万件増加する見込みです。海外から来た留学生や社会人の方々がスムーズに部屋を借りられるよう、英語、韓国語、中国語、ベトナム語、ネパール語に対応できる世界各国出身のスタッフが、チームワークでサポート。言語・文化・慣習の違いによるトラブルを未然に防ぎます。顧客層は、6割が留学生、4割が社会人です。母国にいる両親や家族と連絡できる体制をとり、国境を越えて、しっかりと与信管理。入居者様にとっても貸主様・管理会社様にとっても、安心できるお取り引きとなるよう努めております。

また、賃貸住宅情報総合サイト「Best-Estate.jp」では、英語・中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、日本語、ベトナム語、ポルトガル語の7言語で、外国人向けの賃貸物件を紹介しています。

ー 驚きです。保証や仲介となりますと、単に多言語対応すればよいという話ではありません。「外国人に部屋を貸すのはリスキーだし、手間ばかりかかって利益も出せない」。正直なところ、これが、長きにわたる不動産業界の共通認識だったのではないでしょうか。

後藤:国内不動産業界において、外国人の方々はマーケットとして完全に切り捨てられてきました。外国人の賃貸保証といえば、家賃100万円以上するエグゼクティブ向けの物件がほとんど。ごく一部の悪徳業者が不法な名義貸しを行っていたことや、アジア出身者への偏った見方など様々な要因が重なり、留学生や一般の外国籍市民は、部屋を借りたくても門前払いというケースが多かったんです。「外国人に貸したら物件の価値が下がる」「外国人に貸すほど落ちぶれていないよ」。創業当初は行く先々でそのような反応で、3ヶ月必死に頭を下げて回っても、契約はたった1件という状況でした。

ー それが、12期目を迎えた今では、外国人入居者と貸主・管理会社の双方から「部屋を借りる/貸すならGTN」と頼られる存在に。いったいどのように裾野を広げてこられたのですか?

後藤:「営業活動」ではなく「啓蒙活動」という意識で、ひたすら対話を重ねてきました。

ー 啓蒙活動、ですか?

後藤: はい。居住の自由は本来、すべての人が持つ最低限の権利です。その権利の保障は、不動産業に関わる私たちが忘れてはならない社会的使命だと思います。しかし日本国内では、21世紀を迎えてもなお「日本人ではないから、日本語ができないから、住まいは提供できません」と、目の前で困っている外国人に言ってはばからないような状況でした。できる・できないの話ではないんです。「このような排他的な状況に目をつぶっていて、本当に良いんでしょうか」と。

ー 耳に刺さる言葉です。その思いは、どのくらい伝わりましたか? 善意だけでは、なかなか動いてもらえなかったのでは……?

後藤:経済合理性から考えても、外国人は日本人と同等に「外せないマーケット」だということも、はっきりと数字でお示ししてきました。その認識は、近年ずいぶん深まってきたと思います。
国内賃貸市場はいま、供給過剰による空き室化が懸念されています。超低金利を背景に学生向けワンルームマンションの着工数は増加していますが、それとは裏腹に、大学進学者数は激減の傾向にあり、「2018年問題」として取り沙汰されています。

一方、日本に暮らす外国人は約238万人、留学生は約28万人(2016年12月末、法務省)。年々増加しています。そして実に、その9割以上は賃貸物件にお住まいなんです。

ー 外国人を対象から外すということは、マーケットの大半をみすみす捨ててしまうことになるんですね。

 

グローバリゼーションの源は、「言語力」ではなく「人間性」。「ここまでやるか」と言われるほどの善意が、人と人とを結ぶ。

入居後も、マルチリンガルスタッフがきめ細かにサポートする。右から生活サポート部のミンさん(ベトナム)、シャキヤさん(ネパール)、レイラさん(アメリカ)、スンウォンさん(韓国)、董さん(中国)、茶谷さん(日本)。

ー さて、実際問題、言語や文化の違う方々を対象にサービスを提供するのは一筋縄ではいかないと思います。御社は、家賃保証のみならず、別途料金なしで入居後のサポートまで行なっていますね。どのような相談に応じているのですか?

後藤:シャワーのお湯が出ない、家賃の振込方法が分からない(入居者)、ゴミの捨て方を注意したい、夜中に騒いでうるさいので注意してほしい(管理会社)など、月間約3,000件の問い合わせが寄せられます。基本的には、3〜5言語を話すマルチリンガルのスタッフ30名が多言語で対応しています。問い合わせの多くは生活習慣や不動産慣習の違いから生じる相互の理解不足によるものですので、事前のレクチャーや、ていねいなコミュニケーションにより解消可能なものです。

ー それにしても、サポート内容は、家賃保証会社の域を完全に越えていますね!

後藤:そもそも、「家賃保証会社」と呼ばれるのは本意ではないんです。私たちは「親代理業」「家族代理業」という思いで取り組んでいますから。これだけの件数を扱っていますと、現実問題として、自殺・殺人案件が発生することもあります。
母国に住む親御さんへの連絡、空港送迎、葬儀手配、遺品整理……想像を絶するほど大変な作業ですが、実費のみで最後までサポートします。ありがたいことに、当社には、手を挙げてその業務を担ってくれる人材がいるんです。

ー それは究極のエピソードです。しかし、住まいとしての不動産は「1人の人生が営まれる場所」なのであり、当然起こり得る問題だという事実は、知っておくべきでしょう。もし、自分が海外で暮らすことになったら……。「不動産の国際化」は、この業界を目指している人だけではなく、全ての人たちに考えてもらいたいトピックスですね。

 

日本に来て良かった! と語る外国人をどれだけ増やせるか。

ー 最後に、後藤社長が考える、これからの不動産業界で求められるインターナショナル・スキルとは何でしょうか?

後藤:言語力は、やはり大事です。当社のスタッフ160名(2017年9月末現在)のうち7割は外国籍なのですが、言語は複数できて当たり前。しかし、いくら流暢に話せたとしてもーー言葉は悪いですが、「言語馬鹿」では、この仕事はできません。

言語の壁は、近い将来、AIのめざましい技術進歩により、ほぼ乗り越えられるようになるでしょう。中国のAIベンチャー大手、iFlytek(アイフライテック)※の音声認識技術などはすごいですよ。方言の違いすら、1字1句違わずに認識しますから。

グローバルに人と人とをつなぐインターナショナル・スキルとは、AIにはない「人間性」に裏打ちされたものではないでしょうか。人間として何が大事かを見極める力、前例や経験がなくても、あきらめずに未来を創ろうとする力、常に打算的に動くのではなく、純粋に、一生懸命に、人のために動こうとする力……。肝心なのは、やはり「心」だと思います。

ー 言語や文化・習慣の違いを前にして諦めてしまうのではなく、同じ人間として、愛情をもってコミュニケーションを取ろうとするメンタリティが、グローバルビジネスには不可欠なのですね。
後藤:気持ちは必ず伝わります。言語や文化の壁を乗り越えて日本に来てくれた方々をきちんと受け入れ、「日本に来て良かった!」と思ってもらえるような社会になれば、その人たちを通して、世界中に日本の良さが伝わっていくのです。遠回りなようですが、そうした信頼関係の蓄積が、市場を活性化し、新たな価値を生み、平和の文化を広げていくのではないでしょうか。

取材協力:株式会社グローバルトラストネットワークス https://www.gtn.co.jp

※ MIT-TechnologyReview2017年度ランキングで世界6位、アジア地域で1位に輝いた。

ビーバー教授の解説

いかがじゃったかな? インターナショナル・スキルを磨く場は、国内にもたくさんあるということを理解していただけたかのう。驚くなかれ、後藤社長は、英語はいまだに話せんそうじゃ。それでも、同業者のみならず経済界が注目するほどのグローバル企業をゼロから創り上げることができたのは、「外国人の方たちに、日本に来て良かった!と思ってもらいたい」という、どこまでも純粋な思いがあったからじゃろう。人を思いやる気持ちに言語や文化の壁は存在しない。さらには世界中から「共感」を呼び、優秀なグローバル人材を引き寄せる。世界へのトビラを開く鍵は、明確なビジョンと、どこまでも深い愛情なのじゃな。

この記事を読んでいる人はこちらの記事も読んでいます

\ あなただけのオリジナル留学がきっと見つかる /

COUNSELING 「留学なんでも相談」に行こう。

COUNSELING 「留学なんでも相談」に行こう。

まずはカウンセラーに相談しよう!

みなさん、留学カウンセリングってどんなことをすると思いますか?   留学が初めての方は、留学そのものやどのように留学先を決めればいいか分からない方も多いはずです。体調がおかしいと思ったら病院へ行くように、「留学ってどんなものがあるの?」「私に合った国ってどこ?」というみなさんの些細な疑問や不安をひとつひとつ解決するのが留学カウンセリングです。

留学相談はこちら

CONTACTお気軽にご相談ください

0120-036-177
( 営業時間/11:30-20:30 年中無休 )

トップに戻る