第47回 私の留学テーマの作り方。「シニア×IT」の促進を!

いざ「留学しよう!」と思った時に「留学中のテーマ」の作り方に悩んでいる人も多いのではないだろうか?だが、それは留学前には、非常に大事なことで「目的・目標のある留学」と「そうでない留学」では成果は大きく異なる。そして、「そのテーマが留学をどのように成果あるものにするのか?」も具体的に知りたい方も多いだろう。

そこで、今回は、「シニア×IT」をテーマに、イギリスのウォーリック大学に交換留学し、現地での活動を通して「留学前に持っていた問題意識がより明確になった」と言う、早稲田大学4年生の氏家好野(うじけよしの)さんに話を伺った。

■奨学金合格のためには、留学前の”テーマ選び”が大事!ヒントは自分の原体験!!

早稲田大学4年生の氏家好野さん

―氏家さんがされていた留学はどのようなものでしたか?

大学3年生の時に、イギリスのコヴェントリーにあるウォーリック大学のビジネススクールに10ヶ月間、交換留学で行っていました。また、学生生活に加え、授業が少ない時期には高齢者の方のためのチャリティー団体「Age UK」で週2回ほどボランティア活動を行なっていました。

―留学先をイギリスに決められた理由は?

私自身、帰国子女でアメリカ生活が長かったこともあり、「同じ所に行くよりは、自分にとって未知の地であるヨーロッパがいい」と思って決めました。

本当はイギリスではなく、スペインに行きたい気持ちもあったのですが、親から「せっかく留学に行くのであれば、レベルの高い学校で学べる方がよい」というアドバイスをもらい、今回はイギリスの大学を志望しました。

―イギリスは世界中から優秀な学生が集まる場所として有名ですからね。留学計画を立てるにあたって、情報集めなどはどのように行なわれましたか?

私の場合は、”自力での情報集め”と、”友人から話を聞く”いう2つの方法を合わせて使いました。

“自力での情報集め”については、まずは大学の留学センターに行き、奨学金や留学先のの情報探しからスタートさせました。留学センターに行くと、奨学金やその他留学に関する情報が色々とあるんですよ。今回の留学で活用した”トビタテ!留学JAPAN(以下、トビタテ!)”の奨学金制度もここで知りました。

また、”友人から話を聞く”というのは、主に大学内で留学経験のある先輩たちに話を聞いて、情報集めを行ないました。周りに留学経験者が多い環境でしたので、ここでも友達経由で、たくさん情報が入ってきました。

―なるほど、まずは留学したいと思ったら”留学センター”に行ってみるのが大事そうですね。ちなみに、「トビタテ!留学JAPAN」は選考がありますよね。奨学生として選ばれた秘訣は何だったと思いますか?

これが正解かはわからないのですが、私の場合は「シニア雇用」というテーマがよかったのだと思います。「シニア雇用解決のためのIT活用」というテーマだったのですが、これが今の日本の抱える課題ともマッチしていたのが、ポイントだったのかもしれません。

というのも、トビタテ!の二次面接を担当してくださるのは、民間企業の方なんです。企業側としても「シニア雇用を促進する!」という事には関心があるので、面接の際も話がすごく弾みました。社会性の強いテーマだった事もあり、将来性や可能性を感じてくださる方が多かったのかもしれません。

―シニア雇用をテーマにされた理由は何かありましたか?

どうして「シニア雇用」にしたかというと、それは私が大学1年生の時にした体験が原点でした。ある程度の学歴もあり、資格も何個か持っている身内がいるのですが、その身内が、70歳を超えると、途端にシルバーセンターに行っても、なかなか採用してもらえなくなってしまったんです。そして、同じような境遇の方が多数いることを知りました。

また、シニアの方々が、働き先を新聞で調べていた様子を近くで見ていて、「ネットの方が情報も多いのではないか?」と思い、IT活用にシニア雇用の解決の道を感じたんです。この経験がもとで、「シニアの方が仕事を通じて社会と繋がってほしい」と思うようになり、留学テーマを決める事ができました。

―ご自身の体験が留学テーマのヒントだったのですね!

はい。自分が「本当に経験し、感じたこと」、そして、「それを解決したい!」とエントリーシートに書いていたのも、もしかしたら選考された大きな要因だったのかもしれないです。

―ところで、イギリスというと費用の面が気になるのですが。

はい、イギリスは噂通り、寮でも一人部屋だと日本円にして当時1ヶ月14万円ほどかかってしまうので、やはり高いと感じました。ただ、私の場合は2人部屋でしたので、1ヶ月7万円ほどで済んだのと、トビタテ!で生活費をかなりまかなってもらえたのが助かりました。

―費用を安く抑えたいのであれば、2人部屋というのはいい方法かもしれませんね。ちなみに、現地にはどのようにお金を持って行かれたのですか?

私の場合は、主に日本で作った三菱東京UFJのデビットカードを使っていました。イギリスはカード社会ですので、支払いもほとんどデビットカードでいけますし、現地のATMでお金も下ろす事ができるので、すごく便利なんですよ。残高もネットのオンラインバンクで確認できるので、お金の管理も楽でした。

イギリスの大学の魅力と厳しさ!そして、現地の投資家の前で氏家さんのビジネスはどのように評価されたのか!?

寮の同じフラット(階)のみんなとクリスマスの時に。非常に多国籍でイギリス人が2人。

―ウォーリック大学のビジネススクールではどんなことを学んでいたのですか?

ビジネススクールでは専攻というのはなく、経営学、カスタマーサービス、人事、コーポレートスタディーなど様々な授業を取っていました。特に、ベンチャー企業についてプレゼンする授業あったのですが、それがとても印象深かったです。

―どのような点が印象深かったですか?

内容もよかったのですが、様々な国から来ているクラスメイトたちと触れ合えた事です。授業は基本的に座学なのですが、ベンチャー企業についてグループでプレゼンをする機会が回ってくるんです。シェアタクシーアプリの「Uber(ウーバー)」や、日本でも人気の「インスタグラム」など世界的なベンチャー企業を研究してグループで発表するものです。

私のグループはインド人学生が3人、中国人学生、そして私だったのですが、インド人の学生が積極的に仕切ってくれて、いい意味で自己主張がすごくて圧倒されてしまいました。なすり付け合いの逆と言いますか(笑)。

―世界中から人が集まるイギリスならではですね。

はい。ただ、イギリスならではという点では、逆に大変な事もありました。ウォーリック大学では、授業の出席を取る事も少なく、また、出席しなくても授業はネット配信されて、先生のパワポもダウンロードできるんです。授業よりもテスト重視という感じでした。

そのため、テストを落とすと落第してしまうので、特にテストしかなかった最後の学期は試験勉強がすごく大変でした。。大学受験生のように誰にも会わず図書館にこもって、もう、気がめいってしまって。。。イギリスの大学は、自由度が高い分、一発勝負の恐ろしさはすごくて、授業を重視するアメリカと比べて、一長一短だと思います。

―テストが重視されるのは日本の大学と少し似ているかもしれませんね。その他に、イギリスならではという事はありましたか?

イギリスならではというわけではないのですが、学校の敷地内でビジネスコースならではの「アントレプレナーシップ・ブートキャンプ(Entrepreneurship bootcamp)」が開催され、それに参加できた事が、貴重な体験でした。

部活でウェールズにラフティング(川下り)に行った時。

部活でウェールズにラフティング(川下り)に行った時。

―それはどのようなキャンプだったのですか?

学校の授業とは別で、3、4日起業家精神のある人が集中的に学ぶプログラムです。まず、自分のビジネスプランを模造紙に書くところから始まって、実際にビジネスをスタートさせるのに必要な経営理論、経理、著作権などの授業を受けて、学んだことを自分のビジネスプランに当てはめていき、最後にはVC(ベンチャー企業向け投資会社)の方々の前でプレゼンをします。このVCの方々の前で、ビジネスが認められれば、実際に投資してもらえる事もあるんですよ。

―投資家の前でプレゼンされたのですね。どんなフィードバックをいただきましたか?

私は自分の留学のテーマとしていた「シニア雇用」についてプレゼンしたのですが、高齢化はイギリスでも社会問題となっていることですし、共感していただける部分もあり、ビジネスプランの実現性や、また政府からの援助の可能性など、軒並み好評価をいただく事ができました。

また、海外ならではのフィードバックという点では、「日本は世界の中でも、特に高齢化が進んでいるからこそ、シニア雇用のロールモデルになれるのではないか?」というのもいただけて、自分のビジネスに新たな可能性を感じたりもできました。反面、シニアに対する事業として「ITや雇用に固執する必要があるのかどうか?」という厳しい指摘もいただいてしまったのですが、結果的に、これが私のビジネステーマを「雇用から孤独の解消」へと見つめ直す大切な気づきになりました。

教室を飛び出し、イギリスの大手ボランティア団体で活動!

フランス人の友達に、バーでワイン飲みながら折り紙を教えた

フランス人の友達に、バーでワイン飲みながら折り紙を教えた

―留学中に、学校以外での活動は何か行ないましたか?

はい。イギリス最大級の高齢者のためのチャリティー団体「Age UK」で週2回ボランティア活動をしていました。

Age UKでは、主に高齢者の方の家を訪問してお話をしたり、イベントの告知や団体の活動を広めるための広報活動をさせていただきました。話し相手と言っても、たいした事を話すわけではないのですが、イギリスでは、クリスマスを1人で過ごす高齢者が何万人もいるので、私たちの活動は、そのような方たちの孤独を埋めるために大切なものだったんです。

―シニアの方としゃべるのは話題などで大変な事も多かったのではないでしょうか?

話題もそうなのですが、シニアとの関わりにおいては、相手が目上ですので、その点は、少し難しい部分があるかもしれません。ただ、英語には敬語がない分、日本よりもフラットに話す事はできたと思います。

―確かに、そこは日本語よりも英語の方が楽そうですよね。あと、広報は具体的にどのような事をされていましたか?

具体的には、ネットを使ったPR活動で、Twitterの運用、キャンペーン用のフライヤー(チラシ)作成の企画、その他のネットでの情報配信などです。

―なるほど、海外で”ITを使った広報”を実際に学べるのはすごく有意義そうですね。このボランティアはどのように探されたのですか?

私の場合は、ネットを使って探して、最終的にAge UKにたどり着きました。特に審査などはなかったのですが、まずはネットから団体へメールをしてみて、その後に応募用紙を郵送し、活動に参加できる事になりました。イギリスは、NPOやNGOでのボランティアがとても盛んなので、他にも色々な団体が見つかると思いますよ。

留学生活を通して、悲観的に見ていた日本に明るい未来を感じるように。

ミュンヘンでトビタテ!生と集まった写真

ミュンヘンでトビタテ!生と集まった写真

―留学を経験して何か変わったと思うことはありますか?

イギリスでの留学生活を終えてみて、「日本に対して希望が持てるようになった」と感じています。というのも、私自身、留学前までは日本の事を、経済的な側面、ライフスタイル、日々のニュースからすごくネガティブに見ていたんです。

でも、イギリス留学中に、「私は、日本という国に憧れている」と言う人や、日本の事をよく言ってくれる人に出会ったりなどして、私の中で日本に対する考え方が変わっていき、ネガティブになるのではなく、ポジティブに捉えられるようになりました。これは私にとって、改めて、日本の良さを実感する機会になりました。

―日本を内側から見るのと、外側から見るので、同じものでも違って見えるのですね。

本当にそうだと思います。また、高齢化問題についても同様で、イギリスの投資家たちからの意見をもらう事で、自分の中で考えがブラッシュアップされて、課題も明確になっていったのだと感じます。

また、それは行動の変化に現れて、留学前はやりたいことはあっても、どうしていいかわからずに何もしなかったのですが、留学後は、自分から人に会いに行くようになったり、行動に移せるようにもなりました。

―留学を通して、確実な変化が出てきていますね!今後はどのような活動をしていきたいですか?

私の場合は、大学が9月卒業なので、まだ約10ヶ月大学生活があります。ですので、そのうちにできることに注力していていきたいです。

具体的には、シニアのIT活用促進の事例をつくりたいです。様々な手段があると思うのですが、今、自分の中で感じている課題の解決策になるような。シニアとの関わりはすごく難しい部分も多いのですが、だからこそやりがいがあると思っていますのでがんばっていきたいと思います!

ビーバー教授の解説”多様な人種が、自分の夢を育ててくれる”

いかがじゃったかな。今回の氏家さんのイギリス留学。

ポイントは2つ!「留学前にテーマを決めた事」「それを現地で成長させた事」じゃ!まずは、留学前の計画作り。ここはみんな苦労する所じゃが、氏家さんの話から学べるのは「自分の過去の体験と夢をリンクさせる事」。今回の氏家さんのように、留学のテーマは、自分のこれまでの経験に隠れてる事が多いのじゃ!

そして、「そのテーマを留学中に多くの人に伝える事!」これが大事じゃ。特にイギリスは多種多様な人種がいて、多様な文化が共存するマルチカルチャーな国と言われている。例えば、日本から見る日本、アフリカから見る日本、フランスから見る日本、アメリカから見る日本。それは大きく異なる。

今回の氏家さんのように、そのような環境で自分の夢について語る事で、その夢はブラッシュアップされ、留学後の生き方も大きく変わってくるものじゃ。これから留学を考えている人は、まず、留学テーマを決めるために、これまでの自分の体験を洗い出してみるのはいかがじゃろうか。