第10回<グローバル教育>
日本は本当に世界から取り残されているの?

世界から取り残される日本

テレビや新聞などを見ると、代わり行く世界の経済情勢の中で、日本が遅れをとっているような報道が多い。確かに成長の著しい韓国や中国と比べたら、日本の存在感は以前より減っているようにも思える。果たしてその噂は本当なのか、もし本当ならどうすればいいのかをビーバー教授に聞いてみた。

アジア勢に押される日本。このまま負け組になってしまうの?

高度成長期の日本―ねえビーバー教授、日本は不景気だとか、世界から取り残されているだとか、ニュースを聞いているとどんどん不安になってくるのだけど、日本ってそんなにまずいことになっているの?

Dr. ビーバー:確かに1950年代から70年代の高度成長期や、80年代から90年代のバブル期に比べると、明らかに日本は元気がないな。2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災が追い打ちをかけた。
2011年には、GDP(国内総生産=国内で1年間に新しく生みだされた生産物やサービスの金額の総和のこと。GDPはその国の経済力の目安としてよく用いられる)の順位が、アメリカに次いで日本がずっと2位だったのが3位に転落して、ニュースでも大きく取り上げられたんじゃ。

―そういえば、そんなニュースを見た気もするけど、3位ならまだまだ大丈夫じゃないの?

Dr. ビーバー:話題になったのは、日本に替わって2位になったのが、中国だったからじゃ。それまで日本は、アジア1の先進国と言われていたからね。その地位が脅かされたわけじゃよ。
それに去年、英国の経済誌『エコノミスト』が出版した『2050年の世界‐英エコノミスト誌は予測する』では、50年後には、日本のGDPは韓国の半分に減少し、ランキングも、ロシアやインドネシアに抜かれ下位に転落するという予測も発表されて、よけい危機感が高まったんじゃよ。
同じエコノミスト誌が50年前に特集した「Consider Japan(驚くべき日本)」という記事では、戦後間もない日本が「50年後には経済大国になる」と予測し、そのとおりになったのと対照的じゃな。

―アジア諸国が急成長しているというニュースは確かによく聞くね。そういえばこの間、家電量販店に行ったら、大型テレビは台湾製や韓国製の製品のほうが多くてびっくりしたわ。日本の製品はどうしちゃったの?

Dr. ビーバー:ここ10年のアジア勢の急成長はめざましい。これまで、日本のソニーやパナソニックは、世界的に知られるブランドだった。しかし、世界のテレビ市場では、韓国のサムスン電子が日本勢を抜いて世界のトップブランドとなったんじゃ。スマートフォン部門でも、米国アップル社のiPhoneと首位争いをしている。それに対して、日本の大手家電メーカーは軒並み赤字に転落。中国や台湾、韓国企業に日本企業が買収されるケースも増えているんじゃ。

―私たちが大人になったときの日本ってどうなっているのか心配。このまま日本はダメになるの?

Dr. ビーバー: いやいや、わしが本当に言いたいのはここからじゃ。
日本企業のすべてが業績不振というわけではなく、順調に利益を上げている企業も当然ながら多数あるんじゃ。また、業績不振の企業も、ただ負け組に甘んじているわけではない。
たとえば、ユニクロや無印良品、セブンイレブンといったみんなも知っている企業や、日立、松下電器などの大手電機メーカーは、積極的に東南アジアやインドに拠点を広げようとしている。今後人口が増え、消費の拡大が期待されるアジアの新興国で、いち早くお客をつかんでシェア(売上の占有率)を拡大しようと、しのぎをけずっているんじゃ。

日本企業の工場で働くアジア人労働者―そうなんだ、日本企業もがんばっているんだね。でも、どうしてアジアに進出しているの?

Dr. ビーバー: 少子高齢化という言葉を聞いたことがあるかな?
日本は生まれてくる子供が減って、お年寄りが増えている。ということは、この先、お金を使って物を買ってくれる人が少なくなるということじゃ。難しい言葉で言うと、国内市場が縮小している、というわけじゃよ。これに対して、中国やインドの人口は10億以上もいてまだまだ増えている。経済も急成長しているから、物を買ってくれる人がどんどん増えている、つまり市場が拡大しているんじゃよ。

―だから、早くアジアに会社をつくって、日本のものを買ってくれる人を増やそうとしているんだね。

Dr. ビーバー:そのとおりじゃ。しかし、日本のアジア進出は今に始まったことではない。中国や韓国、台湾などに工場を作って、現地の安い人件費で物を作って安く売る、ということは前から行われていたんじゃ。ただ、従来と今とでは、アジア進出の意味合いがちょっと違っているんじゃ。

―何がどう違っているの?

Dr. ビーバー: 以前のように、アジアに工場を作って、ただ安いものをたくさん作って売るのではなく、ちゃんと会社を作って、現地の人を採用して教育し、現地の人の意見を聞きながら、その国の文化や習慣に合った製品を独自に作ろうとしているんじゃよ。経済が豊かになると、ただ安いものよりも、もっと使いやすいとかカッコいいとか「付加価値」のついたものが欲しくなるものじゃからね。
日本人の創意工夫や繊細な技術を活かして付加価値の高い製品を開発すれば、アジア諸国のたくさんの人たちも日本のものを買ってくれるじゃろう。そうなると、今は元気のない日本経済もまた活性化すると期待されているんじゃよ。

―それを聞いて少し安心。だけど、そうなると、私も将来はインドネシアや台湾で働くことになるかもしれないね。

Dr. ビーバー: そうじゃな。アジア諸国でも共通語は英語だから、英語力はますます重要になるじゃろう。

世界が注目するクール・ジャパン

コスプレする外国人

Dr. ビーバー:日本にはまだまだ、世界に誇れる産業はあるんじゃよ。
たとえば、クール・ジャパンという言葉を知っているかな?
日本のアニメやコミック、ゲームなどのコンテンツが、「超カッコイイ」と、世界中で話題になっているんじゃ。なんと、米国のアドビという会社が、米、英、独、仏、日本の5000人の18歳以上の人に聞いたアンケートでは、日本が世界で一番クリエイティブな国で、東京はニューヨークを抜いて、世界で一番クリエイティブな都市だと答えているんじゃよ。

―へえ、意外! なんだか嬉しくなっちゃうよね!

Dr. ビーバー: ただし、残念なことに、当の日本人が、自分たちをクリエイティブだと思っていないということも、同じ調査で明らかになっているんじゃ。マスコミが、マイナスな情報ばかり強調していることにも責任があると思うが、日本人はもっと自分に自信を持つべきじゃな。
有名なアニメーターやコンテンツクリエイターを多く輩出しているデジタルハリウッド大学の杉山知之学長によると、アニメやコンテンツについて学びたいという留学生が毎年多数入学するという。彼らにとって、日本は憧れの国なんじゃ。

―憧れられるって嬉しいけど、全然知らなかった。もっと自信を持たなくっちゃ!

Dr. ビーバー: そうじゃな。自信を持つだけではなく、自分たちのすごいところを自分たちで発信することも大事じゃよ。
日本政府も、日本の良さを伸ばし、世界に向けてどんどん発信していくべきだとして、2010年に経済産業省内に「クール・ジャパン室」を設置した。そして、日本の文化産業の、海外進出促進や国内外への発信、人材育成などの推進をはじめたんじゃ。アニメやゲームだけでなく、ファッションや、日本のおもてなし文化、食文化など、幅広いジャンルの企業が、経済産業省からの支援を受けて、海外展開を進めているんじゃよ。

―そうなんだ~! あまり知らなかったけど、日本のいいところっていっぱいあるんだね。私も海外に行ったり外国の人に会ったら、日本の良さを広めたいな。

Dr. ビーバー: そうじゃな。きみたちのような若い人には、どんどん海外に出て、語学力やコミュニケーション力をつけて、日本のいいところを発信することを期待しているぞ。

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